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「ワタを育てて機械を動かそう」プロジェクト開始。

こんにちは。東京農工大学科学博物館です。
突然ですが、今年の4月下旬ごろから博物館ではワタの種をお配りしていました。

プロジェクトを始めたきっかけ:「動態展示」を続けたい。


 当館では、「動態展示」と言って機械を動かす展示を行なっています。
その実施には機械のメンテナンス、パーツや素材の確保など様々な準備と労力が必要です。しかし、コロナを経て動態展示の継承もだんだんと難しくなってきました。ボランティアとして協力する技術者の高齢化もあり、機械を動かす人以外も関わる方法を少しずつ探り始めています。そのような中、2021年の学芸員実習の一環で当館所蔵の「ガラ紡」について、学生と展示の継承を考え、機械の簡単なメンテナンスとオンラインでの解説を試みることになりました。エンジニアの経験にはとても届くようなものではありませんが、学生と一緒に機械について学び、糸を作ることで、展示機械と関わっていくヒントを得ることができました。また、もう一つのきっかけはワタの種子を通じて、工学部の学生が展示室の繊維機械を知り、農学部とのつながりを感じてもらうきっかけになればと思い立ったことでした。伯州綿由来の品種「弓ヶ浜」の種子を入手することができ、500名の新入生分の種が確保できました。博物館での栽培もチャレンジしようと考えましたが、あいにく当館の畑候補地は日当たりが悪く、収穫の実現には少々心もとない状況‥。

そこで、「参加型企画」として多くの方に声をかけて、みなさんとともに棉を育てガラ紡を動かして、綿から糸を作る参加型のプロジェクトにチャレンジすることになりました。


ガラ紡って何?

ガラ紡は明治6年に臥雲時致(がうん・たっち<ときむね>)が発明した和製の紡績機です。当館には繊維博物館時代に愛知のガラ紡工場からやってきており、制作年代は昭和期のものと考えられています。
 シンプルな機構で糸を紡ぐことができ、「綿からどうやって糸になるのか?」を展示室の中でお見せするのにはもってこいの機械です。回転でヨリをかけながら筒と綿の重さで糸を引き出す機構のバランスが絶妙なため、機械系の学生にも喜ばれ、学生にも愛されてきました。また、近年はカンボジアでガラ紡を活用するNGOの方が当館に調査に来たり、ガラ紡によるオーガニックコットンの靴下などの商品も見かけます。ガラ紡の機構のシンプルさが再注目され各所で活用の動きが広まりつつあるようです。
 2021年の学芸員実習の際に、ガラ紡の本場である愛知大にある中部地方産業研究所附属産業資料館のガラ紡機のお話を伺いました。ガラ紡の魅力とこれからの可能性について学生とディスカッションしたことで、当館が「動かせる機械を持っている」ことをもっと活用したいと考えるようになりました。

東京農工大学科学博物館所蔵のガラ紡


どきどきの栽培開始

「綿の種が手に入りました!」繊維技術研究会(動体展示のエンジニアメンバー)に見せるとみなさんあっという間に重量から綿の種の量を算出してくださり、新入生分の種子の確保は問題ないことがわかりました。綿くり機を使って綿と種を分け、スタッフ総出で詰め込み、500人分の教材用の綿の種は無事工学部新入生に配られました。
種まきの準備では、課外活動が再開されつつあった当館支援学生団体musset が畑づくりを協力。友の会の皆様にもお世話になりました。
そしてSNSを見ると、一緒に栽培にチャレンジをしてくださっている投稿が!
5月29日には当館のワタの双葉がかわいらしく揃い、
7月16日現在、花芽を付け始めています。



試行錯誤の参加型企画が始まりました。

花芽が付き始めたワタ(7月15日)


無事、育てたワタを使ってガラ紡から糸が作れますように!


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